前回からの続きです。
嘉峪関から乗車したZ179次は順調に西へ走り、翌朝トルファン北駅に到着する30分程前、トイレに並んでいた私のとこに車掌さんが私の切符を持ってやってきました。
「これはお前の切符か?」
「そうだ」
「トルファンではどこを訪れる?」
「ここ(スマホのメモ帳に一覧で書いて見せる)」
「どこに泊まる?」
「ホテルには泊まらないで今夜の列車でクチャへ向かう。これがその切符」
「オッケー(その内容をメモする)」
今まで中国ではスケジュールを確認されたことがなかったので驚きましたが、このあと新疆ウイグル自治区内では同じようなやりとりを何回もしました。
朝9時、まだ暗いトルファン北駅に到着しました。
漢民族とは異なった顔立ちの方が聞いたことない言語を話していて、看板にアラビア文字が併記されていると異国に来たように感じます。
駅の出口には公安の方が数名立っており、駅を出る人全員に身分証のチェックを行っていました。私がパスポートを出すと控えをとってからここでもどこを訪れるのか確認されました。
駅から出てタクシーをチャーターしようと駐車場に向かうと、そこでも待機していた公安に列車内と同じ質問をされたので同じように対応をしました。その後無事タクシーを1日500元でチャーターできましたが、出発前に運転手さんと公安が10分程話していたので、外国人を運ぶときは何かルールがあるようです。
発車直前に近くにいた日本人旅行者から相乗りを提案されましたが、行きたい場所が異なったので結局1人でチャーターすることになりました。
走りだしてすぐ「朝食食べたか?」と聞かれたので「まだ食べてないよ」と答えると牛肉麺屋さんに連れてってくれました。
牛肉麺とお茶。ハマナスの蕾などが入った茯磚茶が各テーブルに置かれていました。
広大な大地を走っていきます。
途中に小さな村も通りました。
トユクの麻扎村に到着しました。
トユクは7世紀にムハンマドの弟子がイスラム教を伝えた地とされ、そのお弟子さんと中国人信者第一号の方がこの地で眠っているという言い伝えから「中国のメッカ」と呼ばれているそうです。
ここ麻扎村の正式名称は麻扎阿勒迪村(Mazar Aldi)と言い、「霊廟前の村」という意味になります。麻扎村の住人はほとんどが墓守の子孫と言われています。
柵から覗くと何やら廃墟の香りが、、、
駐車場のトイレは穴が開いているだけのものでした。冬なので凍っていて匂いはないですが、夏場は厳しそうです。
トユクの地図。
65世帯370人のウイグル族が生活しているようです。
詰所で入場料を払って入ります。
歩き始めてすぐに1人の女性が私のことを尾行しているのに気が付きました。その女性はずっとスマホ見てるわときどき咳をするわで、上から言われて仕方なく尾行している感がすごかったです。
お茶をするための座敷(топчан)がありました。中央アジア文化圏に来たことを実感します。
パンを焼く用かと思われる窯。よく見ると模様が描かれています。
古民居と書かれた家は鍵がかかっていました。
ドイツ人探検家ルコックが滞在した家。当たり前ですが散々な書かれ方をされています。
一軒だけ中から人の気配がするお家がありました。
麻扎村の中心となるモスク。しっかりと鍵が掛けられ中には入れませんでした。
「麻扎阿力地主麻寺」と書かれています。
麻扎阿力地はこの村の名前である麻扎阿勒迪のことで、主麻はイスラム教の金曜礼拝ジュムアの音訳“主麻 zhǔmā ” を意味します。
モスクの向かいの窯は煤がたくさん付いてました。
準備中の露店。
モスクの向こう、山の中腹に建っているのがムハンマドのお弟子さんと中国人信者第一号の方のお墓、霍加木麻扎。
綺麗なお宅もありますが、人の住んでいる気配はありません。
村の外はブドウ畑のようです。
通行止めになったので来た道を戻ります。
モスクの脇に停まっているセダンは北京ナンバーでした。
一面茶色い世界です。
一軒のお宅に観光客が集まっていたので見に行くと、どうやら家の中を公開しているようでした。
入って左側が寝台、右側が居間になっていました。
厨房は外のようです。
瓢箪は水筒でしょうか。
村の中心を流れる川は凍っていました。
この村には窯がたくさんありました。
住民はほとんどいないようです。
「麻扎阿勒迪村」の文字と縦書きのウイグル語。
平安家庭って何のためのプレートなんだろうか。
どこの家も空っぽです。
モスクの横から少し内側が見えました。1780年建立で2,000人が同時に礼拝できるそうです。
モスクの壁には一周鉄条網が張り巡らされていました。
朽ちた家も多かったです。
尾行の女性はだんだんめんどくさくなってきたのか、このあたりでは私の5mほど後ろを隠れもせず堂々と歩いていました。行き止まりにあたって折り返すときの気まずさよ、、、
何軒かのお宅の玄関にこのような飾りがついているのを見かけました。ハミ瓜ですかね。
駐車場まで戻ってきました。写真は詰所です。
道路の反対側は墓地になっています。
山に植物が一切なく、氷点下10度近いのに雪も無いという日本では考えられない環境です。
次回へ続きます。